太陽光発電所の運用診断、どうしていますか?
- 光一 西島
- 9月26日
- 読了時間: 4分

単に「毎月の発電量をグラフ化して眺めるだけ」、そして「発電量が少なければ、ああ、今月は天気が悪かったのだろう」と、すべてを天候のせいにして済ませていませんか?
それだけでは、本来見つけられるはずの設備の不具合や運用上の課題を見逃してしまっているかもしれません。
パフォーマンスレシオ(PR)という診断指標
発電所の運用状況をより正確に把握する手法として、「パフォーマンスレシオ(PR:Performance Ratio)」があります。
パフォーマンスレシオとは、理論上発電できるはずの電力量に対して、実際に発電できた電力量の割合を示す指標です。気象条件(特に日射量)を加味して算出するため、「天候が良かったのに発電が悪い」「逆に天候が悪くても発電が好調だった」などの“違和感”を数字で捉えることができます。
パフォーマンスレシオの計算式
PR(%)=実発電量(kWh)÷ 基準発電量(kWh)X 100
※基準発電量は、モジュールの公称出力、設置容量、設置角度などをもとに、実測または地域ごとの平均日射量から算出します。
実際のPRグラフをもとに診断してみる
上のグラフは、弊社が点検を請け負った太陽光発電所の2019年から2024年までの実際の月次発電量と、設置地域(山口県下松市)の平均日射量から算出したPRをグラフ化したものです。この結果をもとに、以下のような運用診断が可能になります。
① PRが「100%を超えている月」
→ 想定以上に効率よく発電している
パフォーマンスレシオが100%を超えている月は、設計上の期待値を超える発電があったことを示しています。
原因としては、「天候が非常に良かった」「想定よりも日射条件が有利に働いた」「冷却効果が高く、モジュールの温度上昇が抑えられた」などが考えられます。
設備が好調であることの一つの証拠でもあり、安心できるデータです。
② PRが「80〜100%の月」
→ 微細な要因による発電効率の低下の可能性
この範囲内は基本的に“許容範囲”とされますが、以下のような軽微なロス要因が潜んでいる可能性があります。
パネル表面の汚れ(黄砂、鳥の糞、花粉など)
周囲の建物や樹木による影
微細なセルクラックやホットスポットの発生
重要なのは「翌月に回復しているかどうか」です。
回復していれば一時的な汚れや影の影響の可能性が高いです。
回復せず低下傾向が続く場合は、セルクラックやパワコンの一部異常など、恒常的な問題を疑うべきです。
③ PRが「80%未満の月」
→ 設備の異常や大きな問題の可能性が高い
明らかに発電効率が悪化していることを示しており、以下のような重大な要因が考えられます。
セルクラックの進行やホットスポットの拡大
接続箱やケーブルの断線
パワーコンディショナの停止や異常
計測装置の故障やデータ取得の不備
ただし、ここでも「翌月にPRが回復しているかどうか」を必ず確認しましょう。
回復していれば、その月だけ天候不順だった可能性があります。
回復しなければ、本格的な設備点検や異常診断が必要です。
実際に上のグラフから読み解くと
2023年の1月、2月、3月の間、PRの値が80%を大きく下回りました。
この時、何度もパワコンが異常停止を起こして緊急点検を実施しています。
赤外線カメラ搭載ドローンで点検した結果、多くのパネルでホットスポットが検出され、異常が出ている全てのパネルを交換することで復旧しています。
PRを活用すれば、天候のせいにせず問題を発見できる
パフォーマンスレシオは、「発電量が少ない=天気のせい」といった単純な判断から脱却し、設備の健全性を客観的に評価できる強力なツールです。
グラフを「見て終わり」ではなく、数字を分析し、月ごとの傾向を把握することで、不具合の早期発見や、メンテナンスの効率化にもつながります。
PR値が2ヵ月連続して80%を下回ったら
スグに調査・点検の行動を起こしてください。
①パワコンに異常停止などのログが記録されていないか?
②赤外線カメラでパネルを撮影し、広範囲にわたってホットスポットが検出されないか?
③ケーブル系統や端子箱、キュービクルに異常がないか?
この3ステップ(順番)で調べれば何らかの原因が見えてくるはずです。
最後に
もしあなたが太陽光発電所の管理者やオーナーであれば、PRの継続的なモニタリングを習慣化することをおすすめします。そして、異常値に気づいたら、「まず天気ではなく設備を疑う」という視点を持つことで、より安定した運用が可能になります。





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