ホットスポットが発生するメカニズムとは?太陽光パネルに潜む“熱の罠”を徹底解説
- 光一 西島
- 9月27日
- 読了時間: 4分

太陽光発電の運用で、最も見落とされやすいトラブルの一つが「ホットスポット現象」です。
目視では気付きにくく、知らぬ間に発電量を低下させたり、最悪の場合は火災につながるリスクもあるこの現象。一体どのようにして起こるのでしょうか?
今回は、ホットスポットが発生するメカニズムを技術的にわかりやすく解説します。これを知ることで、定期点検や異常の早期発見の重要性がより明確になるはずです。
そもそもホットスポットとは?
ホットスポットとは、太陽光パネル上で局所的に異常な高温が発生する現象です。
本来であれば、すべてのセル(太陽電池)は均一に太陽光を受けて発電し、同じ電流が流れます。ところが、ある一部のセルで何らかの障害が起きると、そのセルが電流の流れを妨げ、逆に熱を発生させる「負荷」へと変わってしまうのです。
発生メカニズム①:直列接続の「落とし穴」
太陽光モジュールは、複数の太陽電池セルが直列接続されています。直列回路では、すべてのセルに同じ電流が流れるという特徴があります。
つまり、たった1枚のセルに問題があるだけで、回路全体の電流が制限されることになります。
発生メカニズム②:影や劣化でセルが“詰まる”
以下のような状況が発生すると、セルは十分な発電ができなくなり、電流が流れにくくなります:
セルの一部に影がかかる(落ち葉、鳥のフン、建物の影など)
マイクロクラックやセルの初期不良
ガラスの破損
ハンダ不良や接触不良
汚れや経年劣化
これにより、該当セルが高抵抗状態となり、「電流のボトルネック」となるのです。
発生メカニズム③:逆電圧がかかって“発電”ではなく“発熱”に
詰まったセルに対して、他の健全なセルが電流を流し続けると、問題のセルには**逆方向の電圧(逆バイアス)**がかかります。
この逆電圧が一定以上になると、セルは発電をやめて、逆に熱を発する素子(いわばヒーター)に変わってしまいます。
これがまさに、ホットスポットの核心的な発生メカニズムです。
発生メカニズム④:温度上昇→材料劣化→悪循環
ホットスポットが形成されると、その部分の温度は80〜150℃以上にまで上昇することもあります。
すると、
EVA樹脂の変色・炭化
ガラス面の焦げ・ひび割れ
バックシートの劣化による絶縁不良
フレームやケーブルの熱損傷
などが発生し、パネルの構造そのものが破壊されていきます。
さらに劣化が進めば、電流の通りがますます悪化 → 熱がより発生 → 劣化が進行…と、**悪循環(自己強化サイクル)**に陥ります。
「バイパスダイオードがあるから大丈夫」は誤解
多くのモジュールには、バイパスダイオードが組み込まれており、問題のあるセルを迂回して電流を流すことで保護する仕組みになっています。
ですが、以下のようなケースではバイパスがうまく機能しません:
微細なクラックや軽微な影による電流低下(バイパスしきれない)
ダイオード自体の劣化や故障
接続箱やジャンクション内部の腐食
したがって、「バイパスがあるから安心」と思い込むのは非常に危険です。
ホットスポットは目に見えない。だから“熱”で見つける
ホットスポットのやっかいな点は、外見からはほとんど分からないということです。特に、初期段階ではパネル表面に変色やひび割れなどの目立った症状は出ません。
しかし、赤外線カメラを使えば、わずかな温度異常も即座に検知できます。そして、これを空からスキャンできるのが、赤外線カメラ搭載ドローンなのです。
🔍 まとめ:ホットスポットを理解すれば「なぜ点検が必要か」が見えてくる
ホットスポットは、太陽光発電システムの発電効率を下げるだけでなく、構造の劣化や火災リスクをもたらす深刻なトラブルです。
そのメカニズムは、直列接続による「電流の詰まり」と、逆電圧による「熱変換」という物理的な原理に基づいています。
目に見えない敵だからこそ、定期的な赤外線ドローン点検で早期に発見し、対策を講じることが重要です。
🔧 ご自身の太陽光設備、最後に熱画像でチェックしたのはいつですか?
メンテナンスを後回しにしていると、知らぬ間に発電ロスや事故のリスクが高まっているかもしれません。赤外線点検は、設備の健康診断です。定期的な診断で、大切な投資とエネルギー資産を守りましょう。





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