太陽光パネルの割れ
- 光一 西島
- 8月31日
- 読了時間: 4分
2025年3月

とある太陽光パネル点検の現場で見つかった「パネルの割れ」写真です。
太陽電池(セル)を保護する目的でパネル表面にはガラスが張られているのですが、その表面に「割れ・ヒビ」が起きていました。
通常で考えられる原因は、「飛び石」による物理的な破損ですが、この太陽光発電所は工場の屋根の上(高さ約12m程)に設置されている為、飛び石の可能性は極めて低い。
では、他にどのような原因で割れたのでしょうか?
表面のガラスが割れる原因としては以下のようなことが考えられます。
①自然災害(台風・地震・大粒の雹(ヒョウ)など):中
・台風や竜巻に似た強風で巻き上げられた小石など物体の衝突によるケース
・地震による振動でパネル表面に負荷がかかり割れるケース
・大粒の雹(ヒョウ)が降り割れるケース
②気象条件(温度の変化による):低
理科の授業で習いましたよね。「暖められると膨張し、冷やされると収縮する」現象。
物体が温度の変化で膨張と収縮を繰り返すことで「劣化し破損」する可能性があります。
しかし、北海道などの雪国でも太陽光発電所が存在するように、この要因だけが原因とは考えにくいです。
『太陽光パネルの一般的な耐温範囲』=「-40度~+85度」です。
とすると「複合要因の可能性」が原因と考えるのが妥当でしょう。
例えば、
・パネルの設置時に衝撃を与えた、屋根の上でヨロけてうっかりパネル表面に手を着いた。
・パネル表面の汚れ(こびりついた鳥の糞など)を硬いブラシでゴシゴシ擦った。
などにより、パネルのガラス表面にマイクロクラック(目に見えないヒビ)が入り、更に気温の寒暖の繰り返しによるパネルの伸縮が繰り返されることによる劣化が生じる可能性は十分にあると思われます。
③害鳥被害 「カラスの石落とし」:高
以前より、カラスが石を咥えて太陽光パネルの上空から落とす「石落とし遊び」があり、多くの被害が報告されている。パネル割れの多くは、これが原因の可能性が高いとされています。
対策として、パネル周辺にカカシを立てておく(のは冗談ですが、)光や音などの害鳥対策は有効かもしれませんね。
④ホットスポットによるガラスの劣化:高
ガラス表面のマイクロクラックや、太陽電池(セル)のマイクロクラックが原因でパネル表面の温度が異常に上昇する現象(=ホットスポット)があります。その温度は80度から100度以上にまで上昇するため、セルやガラス表面にも大きなダメージを与えます。
割れる前の初期段階はマイクロクラック(人間の眼では判別できない微細なヒビ)なので、目視点検での発見は不可能です。そこで有効な点検は、赤外線カメラによるホットスポット調査です。被害が大きくなる前に、定期的な赤外線点検をお薦めします。
以上、パネル表面のガラスが割れる主な原因を書きましたが、多くのオーナー様の反応は、あまり深刻に受け止めない方が多いように感じています。
出来るだけ「修繕費用をかけたくない」気持ちは分かりますが、故障が見つかれば早期修繕をして頂きたいと願います。何故なら・・・、
①太陽光発電システムの配線は、「直列接続」になっている
理科の授業で習いましたよね?乾電池を直列に繋いで豆電球を点灯させる実験です。
乾電池の1つが切れたら豆電球は点灯しなくなります。
太陽光発電システムにおいても、1枚のパネルに異常が出ると他のパネルにも影響を与えて被害が拡大し、やがてシステム全体にダメージを与えます。
②漏電による感電の恐れ
産業用の太陽光発電システムになると「高電圧」の電気を取り扱っています。
パネル表面のガラスが割れると、そこから雨水が入りショートを起こし、漏電の危険性が高まります。メンテナンス作業員の感電事故に繋がる可能性が出てきます。
③パワコン強制停止・パワコン故障のトリガーになる
「直列接続」のため、1枚のパネル故障でも他のパネルや接続箱などに連鎖して劣化が拡大し、やがてシステム全体の電圧不良が発生します。結果、電圧不安定となりそれを検知したパワコンが(システムを守るために)自動強制停止をするのです。
どのような装置も「強制的に電源のオン・オフを繰り返すと」やがて故障します。
つまり、パネル1枚の故障がトリガー(引き金)となり、システム全体を停止に追い込むことになります。パネル1枚おおよそ1万円前後ですが、その修繕を後回しにすることで数十万円の被害に拡大させてしまう恐れがあります。
被害損失や発電ロス損失を最小限にする為の「定期点検」です。
「早期発見・早期修繕」が適正運用の基本です。





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